とあるところの妖怪辞典かなんかによれば、「カニ魔王」とはインカ(※1)の妖怪で、数万匹のカニを配下に従え、年に一度むすめを嫁に差し出さないとハサミで船を沈めてしまうというオソロシイ怪物である。
どこからこんな荒唐無稽なハナシが湧いて出たのか不明だが(インカの妖怪っていうけど、インカは文字もレリーフも遺さないのにどこから引用してきたんじゃい)、インカよりずっと昔のモチェ文化(※2)にはカニの怪物のような意匠がたくさんあるので、そっちに由来しているに違いないに違いないと勝手に解釈している(テキトー)。
※1 「インカ」とは本来「太陽(インティ)の子」を意味し、王に対する尊称だった。スペイン人研究者らがその一族ないし国の中核をなす部族についてもそのように呼んだり、国名として使ったりしたものであり、本来の国名は「タワンティンスーユ」という。
※2 「モチェ」の説明はこちらを参照のこと。
▲上はシパンの王墓から出土した、モチェのカニの神(怪物)。黄金や貴石で作られた豪華な副葬品だ。オリジナルにほぼ忠実なトレスである。どうして一番下の足がカニじゃなくヒトの足になっちゃうのか(他のカニの怪物もみんなそう)、とっても不思議(笑)。
◀︎左はやっぱりモチェ文化より、カニの怪物くん(自分らは「蟹レスラー」と呼んでいる)。向きなどちょっとだけ変えてある。こいつもやっぱりニンゲンの足がついている。しかもその「くつ下」みたいなのはなんじゃらほい(蟹のくせに)。
オリジナルは下図のとおり。
◀︎これが「蟹レスラー」のオリジナル画像である!(本物は土器の装飾で、浮き彫りっぽい立体的な絵付けである)
ちなみに友人はこの図を見て、「じゃんけんで蟹が負けてる」とのたまった(蟹がチョキでニンゲンがグー)。
▲こやつもモチェ文化の土器に描かれていたカニ男のひとり。やっぱりヒトの足がついている(くつ下も履いてる)。しかも甲羅とその上の首(横顔)とで、お顔が二つに増えてる!
かように、アンデス文明のカニ魔王は、はるかな昔から(※3)脈々と存在してきたのである(ただの憶測です)。
※3 いわゆる「インカ」(タワンティンスーユ)は15世紀半ばから16世紀半ば、対するモチェ文化は1世紀から8世紀までの古さと長さを誇る。
2024年3月14日(木)〜24日(日)17時、大怪店《最後の大怪展》に参加します。
BASEショップあります。